03 / CT 標本 INM-4-346
ここから先はモデルではありません。実物の化石をX線CTで撮った、本物のデータです。
博物館では、ガラスケースの外から眺めることしかできません。まして中を切って見るなんて、絶対にできない。でもデータなら切れます。何度でも、どこでも。そして切った先に、この化石のいちばん大事なところがあります。
日本古生物学会が公開している標本 INM-4-346 のCT断層722枚を体積として読み込み、ブラウザ上で光線を飛ばして描いています(レイマーチング)。表面のポリゴンではなく中身の詰まった塊として扱っているので、任意の面で切れます。
この個体は保存がよく、殻表面の肋の傾きが成長を通して追えることで知られています。CTのボクセルは0.077606mm等方。つまり0.08mm刻みで表面の凹凸が残っているということです。
断層 722×622×712・8bit を再標本化して 167×192×191(0.2700 mm/voxel)に落とし、密度をPNGアトラスに焼いて単一HTMLに埋めている。アトラスから体積への復元は元データと最大差0で一致することを検算済み。表面抽出の閾値は配布 .mol の borderLow = 72 をそのまま採用している。
不透明度は alpha = 1 − exp(−Σ(材質×係数)×ステップ長) の形にしてあり、ステップ数を変えても見た目が変わらない。ステップ数はfpsに追従して100〜290の間を自動調整する。実測仕様の一覧はこちら。
PCのブラウザ推奨。 WebGL2を使うため、スマートフォンでは動かないことがあります。読み込みは約4MB。
約4MBを読み込みます。WebGL2に対応したPCのブラウザ(Chrome / Edge / Firefox)でお使いください。
別のタブで全画面にひらく
別のタブで全画面にひらく 狭い画面では全画面のほうが操作しやすいです。
殻の表面に走る細かい畝。これは過去の開口部の跡そのもの。斜めに傾いていることが、生きていたときの姿勢の手がかりになります。
外から見えるのは折れ曲がった形だけ。断面を動かして中心まで進むと、いちばん最初にできた部分がきれいな平面に巻いているのが見えます。ここがこの展示の山場です。
内部に閉じ込められた空隙が581個。全体積の0.32%。8000万年ぶんの圧力が残した記録です。表示を切り替えると浮かび上がります。
外から見えるのは、めちゃくちゃに折れ曲がった宇宙人の形です。ところが切って奥まで進むと、いちばん最初にできた部分は、きれいに平らに巻いています。
こわれていなかった。順番に作られていた。ただ、外から見ただけではそれがわからなかっただけです。
正直に書いておきます。隔壁(気室の仕切り)は、このデータでは見えません。 房室が殻とほぼ同じ濃度の物質で充填されているため、密度の差で分離できないからです。同じ理由で、母岩を溶かして化石を掘り出す演出もできません——配布データは化石だけを切り出した状態で、母岩は最初から入っていないためです。
できるのは、表面の肋、任意断面、内部の割れと空隙、そして外から見えない初期の平面巻き。それで十分でした。
密度を仮定して置く。密度の差で層を分ける。勾配のピークで境界を抜く。断面で確かめる。——ここでやっている手順は、実は重力探査で地下構造を読む手順とまったく同じです。ブーゲー重力異常図は、いわば大地のCTスキャンです。
そして向こうでも、同じ形の限界にぶつかります。北海道東部の重力図では、根釧台地の低重力異常は「密度の小さい第四紀堆積物が約1.7km」で説明できたのに、根室半島の高重力異常は表層の構造だけでは説明できなかった、と正直に書かれています。閾値で説明できるところと、できないところが分かれる。私たちが「隔壁は密度差として出ていない」と書いたのと、同じ種類の line です。
ついでに使える数字がひとつ。同じ報告に、北海道のボーリング調査から白亜系の岩石の平均密度が約2.5 g/cm³(上を覆う第四紀堆積物は約1.5 g/cm³)とあります。Peterman らがアンモナイトの殻に用いた密度は2.54 g/cm³。殻と、それを埋めた岩が、ほぼ同じ密度だった。このCTで隔壁が分離できない理由が、ここに一行で書いてあるようなものです。
出典:森尻理恵ほか(2000)北海道東部地域の重力異常について.地質調査所月報 51(11): 537–558. なおこの報告の対象範囲は釧路・根室・網走で、ニッポニテスの産地は含まれません。手法と密度の値だけを借りています。
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